真山美雪の「この人に会いたい!」も第3回となりました。そこで今回は、真山美雪が人材育成コンサルタントとして活躍するきっかけとなった女性、堤江実さんをお訪ねしました。
堤さんは、文化放送のアナウンサーとしてご活躍後、企業経営などを経て、現在は詩人として活動していらっしゃいます。その優しい語り口にひきこまれ、「美しいことばを話す」ということから、詩や絵本のこと、豪華客船「飛鳥」でのクルーズのこと、人を豊かにする企業経営のことなど、時のたつのを忘れて語り合いました。
プロフィール
堤 江実さん
(つつみ・えみ)
詩人、エッセイスト。立教大学文学部英米文学科卒業。文化放送のアナウンサーを経て、グリーティングカードなどコミュニケーションツールを扱う会社を経営。そうした経験の中で、高校時代に始めた詩の世界へ立ち返り、創作活動に専念するように。現在、詩、翻訳、エッセイ、絵本など、幅広いジャンルでの著作、およびミュージシャンと競演する自作の詩の朗読コンサートなどの活動を行っている。著書も多数。絵本・地球いのちの星三部作のうち、2冊が2008年度、2009年度とユネスコ・アジア文化センター賞を受賞、残りの一冊は2006年度読書推進協議会賞を受賞している。
真山:堤さんとのご縁は、(株)キャリアスタッフ(現:アデコ)のキャリアアドバイザーの募集に応募して面接試験でお目にかかったことがはじまりでした。
堤 :詩人としての活動に専念するようになったのは、この10年ほどのことです。真山さんにはじめてお目にかかった当時は、企業経営者に対しての専属コンサルティングや人材派遣業のキャリアスタッフでの新規事業として女性のキャリア開発プロジェクトを手掛けていました。そのプロジェクトの一環で、キャリアアドバイザーを募集していたのです。
真山:今でこそ、募集資格に年齢制限などなくなりましたが、1995年当時は、まだ当たり前のように年齢制限があった時代でした。それなのに「40歳以上」とあったのが印象的でした。「まだ30代なのですが・・・」と思い切って応募させていただいたのを覚えています。
堤 :当時は、女性は結婚したら寿退社が当然という風潮。そうした社会的背景もあって、「40歳未満の間違いではないですか」という問い合わせを沢山いただきました。でも、真の狙いは年齢ではありませんでした。
「年齢的には条件に満たないけれど、キャリアを積んだ年上の女性と共に頑張ってみたい」という、チャレンジ精神に満ちた人を待っていたのです。まさに真山さんのような人を求めていたわけです。
真山:今ではキャリアアドバイザーの教育や資格制度もできて、社会に認知されてきています。でも当時は、そうした発想自体、日本に入ってきたばかりで、研修では、アメリカのテキストをもとに逐次通訳を介しながらアメリカ人講師の講義を英語で受けるチャンスにも恵まれました。
堤 :まだ、女性の企業内活用という理念を組織の中で実行していく社会体制が十分に整っていませんでした。社会背景の変化とともに、今では企業や組織でも積極的に女性を活用するようになりました。
真山:そうですね。働く女性の方々へ向けてセミナーや講演をする機会も増えましたが、女性らしさを生かしてキャリアを積んでいける女性がどんどん増えているのは、嬉しいことです。
堤 :最近、書き上げた『守りたい!美しい日本語ー詩を詠んで感じることばの力ー』の中でも触れているのですが、ある統計によると、情報の伝わり方として、見た目の印象が55%、音や声のトーンによるものが38%だとか。一方で、ことば自体の持つ意味によるものは、たった7%しかないというのです。
そうすると、ことばの内容だけで相手に情報を伝えるメールは、じつは、情報全体のうち7%でしかないということになってしまいます。でも、メールですべてがわかったような気になることも多いのではないでしょうか。また、ことばは理性や理論をつかさどる左脳情報なので、メンタリティの深いところまでは伝わりにくい。
だからこそ、ことばを音にのせるのは大事なことだといえるでしょう。
真山:メールだけのコミュニケーションではなく、大事な用件については実際に相手に会って伝える。無理な場合はことばを音にのせた電話も併用するなど、こちらの情報や意図が誤って伝わらないように心がける必要がありますね。
スカイプやiPodのようなツールが普及し、世界のほとんどの場所で手軽にインターネットが楽しめるようになりました。メールに加えて、音をのせたコミュニケーションも身近になってきたということですから、これからはそうしたツールも活用したいですね。
堤 :メールでは、要件を簡潔にしようと、こちらもつい「了解」と、シンプルにひと言で返信してしまいがちですものね。
堤 :今の時代、美しい日本語を聴くチャンスが失われているのではないでしょうか。小学校の国語では、音読の時間がありません。一方、テレビからは乱れたことばが滝のように耳に入ってきます。これでは、美しいことばを身につけるのも難しいでしょう。
真山:そうかもしれません。大学の学生に向けてビジネスマナーの講義をしますと、中には、尊敬語や謙譲語についてきちんと使うことができる学生がいます。尋ねたら、親御さんがそうしたことばをきちんと使っていらっしゃるようでした。「お客さまが来る時、母が●●さんがお見えになるから・・・と言っていた」という具合です。耳から正しい日本語を常に音で体感していたからこそ、使うことができたわけです。
ですから、周囲の大人が正しい日本語を使っていれば、子供もそれを受け継いでいくことができるのでしょうね。講義に参加した学生が親となったとき、美しいことばで話しができる大人であって欲しいと思います。そうすれば、その周りの子供たちも、美しいことばを受け継いでいくことができます。
堤 :あと、家族の話が「会話」になっているかどうかも大事だと思うのです。親御さんがお子さんに、一方的に「勉強しなさい」「お風呂に入りなさい」「早くしなさい」というのは会話ではありません。
また、「品格のある日本語」という意味では、話の内容も大切ではないでしょうか。世界で起こっている出来事を話題にしたり、それに対して意見を交換したり。ことばのベースに自分の思いなどが存在しなければ、ことばが品格をもつことは難しいと感じます。
また、時代背景によるところも大きいでしょうが、今、80代をむかえられたような方々は、美しい日本語を話されると思うのです。ですから、そうした年配の方々ときちんと「会話」をする機会を大事にしたいものです。
真山:おっしゃるように、同世代とばかりではなく世代を超えてどなたともきちんと会話ができる人は、美しいことばを使うことができますね。
普段から美しいことばを耳にしたり、使い慣れていなければ、自然には話せません。
ビジネスシーンでは、さまざまな世代の方と活動をともにするわけですし、年配の方と会話を交わす機会は大事ですね。
堤 :不思議なことに、相手から発せられたことばによって物理的な変化というものもあるのです。良くない思いを持った人が放ったことばをうけると、体温が下がったり。反対に、やさしい気持ちでかけてくれたことばによって、体温が上がることもあります。「言霊」といいますが、ことば自体が音を持った瞬間、強い力を持つのです。
真山:英語で話すと性格が変わる気がするのです。気がつくと、日本語で話しているときの方が、ゆったりとやさしい言い方をしています。英語だと、論理的になる傾向があると感じます。
堤 :そうですね。英語は合理的でシンプルでわかりやすい。日本語の話しことばは、争いのない中で生まれたそうです。
ルーツは縄文時代にあり、出土した遺跡から、驚くほど長い期間、一箇所に定住していたことがわかっていますが、これは戦いが少なかったからこそ可能だったとか。戦いのないゆったりとした時間に育まれた日本語。それがやさしい響きや言い方に影響しているのではないでしょうか。
日本語の響きは美しいでしょう。この15年ほど、豪華客船「飛鳥」の世界一周クルーズで、詩の朗読会の講師を10回ほど担当しておりますが、参加される方の癒しにもなっているようです。何回か朗読を繰り返すうち、不眠症や肩こり、腰痛などが気にならなくなったとおっしゃる方も少なくありません。朗読は、自分を解放する手段でもあるのです。社会的地位の高い方は、朗読しながら泣いてしまう方もいらっしゃるほどです。
真山:堤さんのお書きになる詩や絵本は、優しくてとても素敵です。そして声や話し方もやさしく上品で音が伝えられず残念です。これからも、益々のご活躍をお祈りしています。
(対談日:2010年6月24日)
就職が人生の転機として、素晴らしい経験となりますように
キャリアアドバイザーとして堤さんに採用していただいたことが、私の人生をさらに豊かにするひとつの転機となりました。
今年も非常に厳しい採用状況ですが、「就職」という人生における大きな転機に後悔のないような準備をしておくことが必要です。就職活動に取り組む皆さまの夢を実現するお手伝いができましたら幸いです。ビジヨンテツクでは、就職を志す学生のみなさまへ、『就職対策セミナー』や『就職・キャリアカウンセリング』を行っています。
株式会社ビジヨンテツク代表 真山美雪